ドラマ「カルテット」(TBS系 火曜夜10時)第2話も脚本家坂元さんワールドに包まれました。
ずっとそばに置いてあった古ぼけたクマのぬいぐるみ。そこにあるのが当たり前で日常で、あまりにも普通になっていた。
ある日親戚の子が遊びに来てそのクマのぬいぐるみをいたく気に入った。その子はそのクマのぬいぐるみを「持って帰る。」と言い出した。私はその子よりずいぶん大きかったし、「ダメ。」という理由がみつからなかったので「持って帰っていいよ。あげる。」と言った。
そう言いながら、心臓の奥の方がぎゅってなった。そのクマを親戚の子にあげてしまうことが惜しくなったいた。あんなにもうどうでもいい感じだったクマのぬいぐるみが、急に愛おしくて愛しくて仕方のない存在に思えた。でも喜んでぬいぐるみを抱きしめている親戚の子の前で「やっぱりあげない。」と言うことはどうしてもできなかった。楽しい時も悲しい時もずっと一緒にいたクマ。このまま永遠にそこに居続けてくれると思っていたのに、ある日突然他人のモノになってしまった。
心にぽっかりあいた穴は誰にも埋めることはできない。「持って帰っていいよ。」と言ってしまった自分を悔やんでみても、もうクマが戻ってくることはない。
こんな経験をしたことがあなたにもあるのではないでしょうか。
別府司(松田龍平さん)は気のおけない同僚九条結衣(菊池亜希子さん)から
私、多分結婚する。
と言われます。
家森諭高(高橋一生さん)は言います。
言葉と気持ちは違うの。「こんなのデートじゃないんだからね。」って言うのはデートでしょ?
「絶対怒らないからホントのこと言って。」って言われて本当のこと言ったらメッチャ怒られるでしょ?それが、行間。
「連絡しますね。」っていうのは、「連絡しないでね。」って意味でしょ。
行間案件です。
家森「別府君、私、多分結婚する。」
巻真紀(松たか子さん)「別府君、私の結婚、止めて。」
そして真紀は言います。
人生には後から気づいて、間に合わなかったってこともあるんですよ。
そして別府が不意にひとりでヴァイオリンで演奏することになった「アヴェ・マリア」。いつの間にか曲調が変わって、別府と九条がいつもカラオケで歌っていたSPEEDの「White Love」になっています。X JAPANの「紅」ではなく。ふと、九条の歩みが止まります。とてもいいシーンでした。この複雑な心境はドラマならでは表現できるのではないでしょうか。
坂元裕二さんの脚本のこのドラマ、台詞の一語一句、俳優さんの一挙手一投足が気になります。
例えば、「うん?」「うん?」「うん?」「うん?」これで感情を状況を表現してしまいます。
「カルテット」第1話の感想はコチラです ↓
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真紀は言います。
「この人には私がいないとダメ。」っていうのはたいてい「この人がいないと私ダメ。」なんですよね。
本当に女って、人ってめんどくさい。もっとすべてをストレートに言ってくれれば話は早いのに。でも言えないから、そこにドラマが生まれる。だから人って面白い。
別府は真紀に想いを寄せています。でも本当に大切だったのは九条だったのでしょう。このあたりも一言では説明できない人の心情をうまくドラマで表現しています。
コラボやダンスなどのしかけはないドラマです。でも一瞬たりとも目が離せません。言葉や設定の奥が深い。愛子はこのドラマのサスペンスも気になりますが、それより台詞の言い回しを愛してやみません。来週も楽しみです。
見逃した方は、Tverで見ることができます。